放射能と生き物たち(和文講読)
生き物から人へ
ヤマトシジミ
誰も彼には気づかない
身体は小ぶりだが、願ってやまない大きな夢がある
それは先人たちと同じように、青い空に羽ばたき、気が向くままに旅に出ること
疲れたら美しい自慢の羽を心置きなく伸ばせばいい
心地よい風の吹く日のことであろうか
そんな日を待ち望み、待ちくたびれて死んでいくヤマトシジミが福島県で見られるようになりました。彼の夢は決して叶うことはありません。しかし放射能を浴びたヤマトシジミは必死に生き続けています。見えないところであなたの身体にも異変が起きているかもしれません。
――解説――
福島原発事故後、琉球大学の大瀧丈二教授によりヤマトシジミの研究が行われた。この研究では、福島地方において放射能がヤマトシジミの矮小化、成長遅延、形態異常を引き起こしたとしている。この結果を決定づけたのは沖縄で生まれた幼虫に福島産のカタバミを与えて飼育した実験である。この内部被曝実験でヤマトシジミに生存率の低下、矮小化、形態異常が見られた。このように実際に放射能の影響を受けている生物がいる。微量の放射能は人間に影響を与えないというのは過信ではないだろうか。