岡野栄之君(1977年卒)

志木高の思い出と研究者人生

alumni_okano.jpg私は現在義塾の医学部で、人工多能性幹細胞(iPS 細胞) を用いた神経系の再生医療の開発、そして遺伝子改変技術を用いた革新的な脳科学の研究に携わっております。天文学者であった祖父の影響からか、幼い頃から研究者になりたいと思っておりました。そんな視点から、高校受験の志望校選びの時も、志木高を訪れた際、これこそ、自分の行くべき高校だと直感的に閃きました。自然が豊かな広い敷地で、発想に耽り、受験勉強にとらわれず、自分の興味を持つ勉強を存分に出来るのでは?という期待に見事に応えてくれたのが、この志木高でした。入学後授業を受けてみますと、志木高の先生方は、文系でも理系でも、また芸術系でも、自分の世界を持った立派な学者として我々生徒に御指導下さいました。受験にとらわれず、本当の学問を高校生に伝えていく、そんな誇り高い先生たちに習ったことが、その後の私の人生に大きく影響しました。例えば理系科目では、高1の生物の授業で先生に神経誘導とシュペーマンのオーガナイザーの実験について習った事が、2009 年にiPS 細胞から神経系の幹細胞を誘導する技術開発を世界で初めて成功できた事につながる、大きなヒントとなりました。一方文系科目の現代国語では、1年間を通して舞姫と森鴎外だけを対象に徹底的に勉強するという大学ゼミのようなスタイルの授業でした。これは、まさに研究者育成のための英才教育であると確信します。

また志木高の魅力は、その充実したクラブ活動なくして語れません。私は、軟式庭球部に属し、諸先輩方や素晴らしい仲間たちと巡り会うとともに、どんな時にも挫けない体力と気力を身につける事が出来ました。また、クラブの幹部を任されて、人間関係や管理職の在り方について勉強出来ました。このように志木高を選んだ事は本当に正解でした。志木高の良い意味でのユニークさを体験し、お陰様で充実した研究者人生を送ることが出来ていると思っております。志木高で巡り会えた友人たち、恩師の先生方に心から感謝致します。

(『学校案内』2012~2015年度版より転載)