板垣龍佑君(2001年卒)

やり切るということ

alumni_itagaki.jpg「高校時代何をしていましたか?」そう聞かれると、私は答えに窮してしまいます。何もしていなかったわけではありません。でも、1つのことをやり切ったとも言えない、いや、私は言ってはいけないのです。

今、私は某テレビ局でアナウンサーをしています。平日夕方からの情報番組でMC を務め、一方でスポーツ中継などにも携わっています。15 年前は、現在の仕事のことなど考えていませんでした。志木高での生活に、どっぷり漬かっていました。

東京ドームが2個すっぽり入る広大な敷地。都会から隔離された大自然。そこに敷かれているのは最低限の校則。受験という試練に追われることもなく、研究にふけっても、音楽にのめり込んでも、異性を追いかけても、何をしても構わない。3年間好きなことに没頭できる環境が志木高にはあるのです。その中で私は、ラグビー部に所属していました。血と汗と泥にまみれ、ひたすらにボールを追う日々。仲間と男同士本音でぶつかりあい、時に衝突しながらも力を合わせていく。練習以外でもいつも共に行動して、くだらない話で大笑いして...華はなくても友情がある、最高に楽しい毎日でした。

しかし、高3の夏。最後の最後で、私は部活を辞めました。ひとえに、私の人間としての弱さが理由です。なぜ歯を食いしばって、あと少し我慢できなかったのか。一緒に頑張ってきた仲間を裏切ってしまったのか。人生最大の挫折であり、後悔です。

卒業して12 年、仲間たちは全てを水に流し、こんな私を受け入れてくれています。一生をかけて付き合っていきたいと思いますし、彼らと出会えた志木高に、心から感謝しています。それでも、私は部活をやり切ったとは言えません。二度と中途半端にしない。好きなことをやり切る。そう思って、小学生からの夢である現在の仕事に就き、私は今もなお、その心構えで生きています。

 志木高には、自由があり、時間があり、仲間がいます。人生で一度きり、かけがえのない青春時代。自由と時間を手にいれ、何でもいいから100%の力を注ぎ、決して途中で投げ出さないでください。素晴らしい仲間を見つけてください。共に1つのことをやり切った。そう言えることが、一生の財産となるでしょう。

(『学校案内』2014~2015年度版より転載)