志木高生の捕鯨に関する意識調査

【調査方法】志木高1,2年生を対象にメールによるアンケート調査を行った。
アンケート実施日時:2014年12月18日(木)
人数:73人
質問内容:・捕鯨はいつから行われていたと思うか
     ・鯨肉を食べたいと思うか
     ・捕鯨について賛成か
     ・鯨肉を食べたことがあるか
     ・調査補鯨後の鯨肉を今でも食べられることを知っているか
     ・捕鯨は伝統だと思うか
※グラフ内の数字は人数

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特に鯨食経験のある生徒が多いことに驚いた。だがその一方でクジラを食べたいかについては否定的な意見もあり、食べた者全員がこれからも食べたいといっているわけではないことがわかる。捕鯨の開始時期については江戸時代・明治時代が多かったが、これは外国文化との接触という面と、江戸時代の肉食を忌避する思想が根拠ではないかと思う。紀元前の貝塚などからイルカやクジラの骨が見つかっていることから、積極的な捕鯨が行われていたといえるのだろう。「捕鯨を伝統だと思うか」については、我々の議論においても伝統であるとする意見のほうが多かった。

鯨肉在庫量の推移からみる捕鯨の是非

捕鯨推進派からの資料では水産庁のもの(2011年)を、捕鯨反対派からの資料ではイルカ&クジラ・アクション・ネットワークが公開しているもの(2012年)のものを比較してみる。

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上の図が水産庁、下の図がIKANのものだ。二つに違いは見られない。「鯨肉の在庫が年々増えている」ということは事実であり、昔からそのことは指摘されていて2006年の日刊スポーツ新聞では『日本による調査捕鯨の副産物として売られる鯨肉の国内在庫が増加傾向にあり、10年前に比べほぼ倍になっている』-①)ことが明らかになり、『水産庁もこの事実を認め』ていると報道していた。また、反捕鯨団体の資料に、どのようにして日本人が捕鯨から離れていったか分かるグラフがあったので、図3,4を見てもらいたい。

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これらのことから日本人が鯨食から離れてしまっていることは明らかである。

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私達が行ったディベート内で捕鯨の賛否について「判断しきれない」「どちらかと言えば賛成」というのがほとんどの人の意見であった。捕鯨反対派の意見には、「どちらでもいいのならば、外交的にバッシングを受けながら続ける必要はないのではないか」というものがあった。この需要のなさを表したグラフの内容をみれば、やめてしまった方がいいように一見思える。私自身も「判断しきれない」。というのも、本当に日本人が鯨肉を欲しているのかいないのか、あの在庫量のグラフでは見えてこないからだ。反捕鯨団体の図2を見ると、昔は鯨肉をよく食べていたことがわかるが、商業捕鯨が禁止されたことで家庭に出回らなくなり、その代わりに家畜を育てる技術の改良、外国から安い肉の輸入が増加するなどして、鯨肉の必要価値が下がり、鯨肉の存在自体忘れられ始めているように感じた。また、出回らないがために、私たちを含めた今の若者世代は鯨肉の味を知らない人がほとんどだろう。そのような状況下で、需要量の話をしても意味がない。国民全員が食べたうえで、「いる」「いらない」をはっきりさせないことには、捕鯨問題は進展しないと思う。食べたうえで、「いらない」と判断し、捕鯨という文化が廃れていくのならば、それは仕方のないことである。伝統芸能である能や歌舞伎も「素晴らしい」と感じる人がいて、観客や役者が揃うことによって成り立っているのであり、無理に残しているわけではない。文化・伝統が残り、受け継がれていくのには理由があるのだ。

志木高の1,2年生にアンケートをしたところ、意外と食べたことがある人が多かったが、今でも食べられることを知らない人は半数を超えていた。本当に日本が商業捕鯨を復活させようとするのならば、国民が捕鯨に対して自分の意見を持ち、さらには賛成が過半数に達しなければいけないだろう。「いつから行われていたと思うか」という質問に対しての答えでは、縄文時代だという正解は一つもなかったように、国民が捕鯨について十分に知っているとは言えない今の状態では、そのスタートラインにすら立てていないのである。もっとマスコミと水産庁とが連携し、情報を発信していくことが重要であると思う。

参考文献

  • 図1:「水産庁 鯨肉の在庫量と供給量の推移」、水産物流通統計 財務省貿易統計 漁業・養殖業生産統計 日本鯨類研究所事業報告書、2011年5月公表
    http://www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/shiryo2_4.pdf 閲覧日:12月18日)。
  • 図2,3,4:「23.7g!?」、イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク、2012年6月公表
    http://ika-net.jp/images/pdf_files/23.7g_j3.pdf 閲覧日:12月18日)
  • ①:日刊スポーツ新聞「調査捕鯨の過剰で鯨肉在庫10年で倍増」、2006年1月28日公表 (http://www.nikkansports.com/ns/general/f-so-tp0-060128-0001.html 閲覧日:12月18日)