本校3年の後藤龍星君が、理数教育研究所主催の塩野直道記念第6回「算数・数学の自由研究」作品コンクールにおいて、奨励賞(高等学校の部)を受賞しました。作品タイトルは「イソップ物語の矛盾―本当にカラスは水を飲めたのか―」です。

 今回のコンクールには、小学生・中学生・高校生合わせて16,485件の応募がありました。奨励賞は最優秀賞・優秀賞・特別賞に次ぐ賞です。

 この作品は、昨年度の数学Bで取り組んだ自由研究で、2018年3月、生徒の作品集『欅』26号に掲載されました。その後、数学Bの科目担当者であった蒲田みどり先生(写真向かって左側)がコンクールへの応募を薦めてくれたことで、今回の受賞となりました。以下に後藤龍星君のコメントを掲載します。

 久しぶりに自らの本棚を整理していると、幼い頃に読んだ『イソップ物語』を見つけました。十数年ぶりに目を通してみると、非常に簡潔ながらも、様々な教訓を織り込んであり感心しました。しかし、その中によく考えてみると少し不可解な点を見つけました。それが「カラスと水差し」の場面です。口渇状態のカラスが水瓶を見つけたのですが、そこにはわずかな水しか入っていませんでした。そこで石を放り込んでみずかさを増すことで、嘴に届く位置まで水位をあげるという話です。
 しかし、わずかしか水がなかったのに石を入れることでそこまで急激な水面上昇が見込めるのでしょうか。そこに疑問を抱き、水瓶の体積や嘴の長さなど様々な条件を数学的に導き出し、果たしていくらの水が初期条件であれば可飲水位まであげることができるのかを計算によって求めました。すると、最低でも水瓶の半分程度は水がないと可飲水位には到達しないことがわかったのです。これは、わずかな水しか入っていなかったという前提に矛盾するのではないか、私はそのように結論付けました。

 今回、このような形で純粋に疑問を抱いたことを、数学的に検討・証明できたことは非常に有意義な経験になりました。結果は自分が想像していた以上に、前提を覆すもので驚きました。また、証明の過程において、様々な方法を駆使して回答にたどり着けたことは嬉しかったです。
 そこまで吟味せずに読んでいれば、気づかないことでしょうし、まして児童書なので、多少理論から逸れていても頓知として許され、受容されているのでしょう。