118th_speech01.jpg 7月17日(金)、慶應義塾大学三田キャンパス(西校舎ホール)において、第118回志木演説会が行われました。

 今回の演説会では、金子勝氏(慶應義塾大学経済学部教授)を講師にお迎えして、「常識を疑う――問題の答はひとつしかないのか」と題してご講演いただきました。髙橋郁夫校長による紹介の後、登壇された金子氏は、マスメディアで活躍する姿そのままに、エネルギッシュかつ知的に、またユーモアを交え、高校時代に野球部で間違った練習方法を信じてしまった失敗談等を例に、現在通じている常識を鵜呑みにせず、一つ一つ自分の手足で世界の実態を把握していく大切さについて熱弁を振るいました。

118th_speech02.jpg 工事現場の上に覆いがある理由は、決して、危険な鉄骨やハンマーの落下から我々を守るためなのではなく、その危うさを忘れる、つまり思考停止を強いるためなのだと金子氏は喝破し、よく似たまやかしが、日本経済や国際政治においてもまかり通っている現状を鋭く倦むことなく指摘していきます。原発事故をめぐる報道上の虚偽やギリシャ危機の真の原因等、具体的な問題と経済学の専門知を自在に交錯させて説得力ある仮説を開陳する金子氏の姿は、未来の塾生である志木高生に手加減一切なしの真剣さでメッセージを伝えようとする気迫に満ち満ちていました。

118th_speech03.jpg 現在、世界は未曽有の転換期を迎えており、予測不能な不安と隣り合わせではあるが、だからこそ若者には、わくわくする世界へと乗り出す機会が与えられていることを慎重に指し示し、二時間近い講演は幕を閉じました。三年生から飛び出した、政治状況や世論に流されやすい自分についての相談にも、時間の許す限り真摯に応えてくださいました。金子氏の一言一言に、膝を乗り出して聞き入っていた志木高生の姿が印象に残ります。最後には生徒諸君から割れんばかりの盛大な拍手が巻き起こりました。この講演の記録は、全校生徒に配られる「ことばと文化」20号に掲載されます。志木高生が各々の常識の殻を破り、問題に対する創造的な答えを導き出していく未来を期待しています。

 次回の第119回志木演説会は、12月に予定されています。生徒諸君、お楽しみに。


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