フィンランドとの交流プログラム(訪問編)

 2019年8月20日(火)~8月28日(水)、国際交流の一環として、生徒10名、教員3名がフィンランドを訪れました。生徒たちは、フィンランドの古都トゥルクのルオスタリヴオリ・ルシオン高校(Luostarivuoren Lyseon Lukio)に通うホストブラザー・ホストシスターの家庭でホームステイしながら、現地の高校の授業に参加し、博物館や史跡を見学し、森や湖などのフィンランドの雄大な自然に触れました。

 今年度は、例年の内容からはやや趣向を新たにした研修でした。学術的な観点としては、トゥルク大聖堂、トゥルク城、聖歌隊楽団、生物学博物館、手工芸博物館、かつての海上要塞スオメンリンナ島を訪れ、フィンランドの歴史や文化を学びました。自然体験としては、アウラ川でのカヌー、サボ湖の周辺の6km散策を体験しました。どちらも、よく晴れた日、涼しい気候の中、フィンランドの風土を深く感じることができました。

 フィンランド式サウナも体験しました。日本のサウナと異なり、フィンランドのサウナは、灼熱の石に水をかけ、それによって生じる蒸気の熱波が、活発な新陳代謝を促します。体が充分に熱くなったら、そのまま水温17度の湖に飛び込みます。最初は冷たく感じますが、すぐに慣れて、とても温かくすら感じられます。生徒たちは大いに盛り上がり、交流もより深まって、とても楽しい時間を過ごしていました。

 今回の国際交流で、生徒たちは、故郷を離れ、異国でホームステイをして、慣れない英語でコミュニケーションを取り、フィンランドの自然と文化と歴史に触れる体験をしました。それは、生徒たちにとって、とても貴重な時間と経験になったことでしょう。この10月には、今度はいよいよフィンランドの生徒たちが日本を訪れます。彼らと再会できる日を、生徒・教員一同、楽しみにしています。

参加した生徒の感想(訪問編)

「フィンランド留学での体験」

 今回の留学でフィンランドの人々や文化と触れることができ、大切な体験をさせていただきました。自分の安全地帯を出て日本以外の世界をみることは僕にとってとても貴重な体験で一生の思い出になりました。わずか9日間でしたが、「目の前にある世界」だけがすべてではないということを実感するのに充分だと思いました。特に思い出に残っていることについて書いていきます。

 まず高校生として、学校での教育に感動しました。フィンランドに行く前から交換留学のホストシスター(以降スヴィ)に日本の学校とは違うとは聞いていました。スヴィが通っている学校では一週間の授業スケジュールはすべて自分で設定することができます。本校でも選択授業があり、二年生の最後に三年目に受ける授業を自由に五つ設定することができますが、これとは柔軟性が格段に違いました。日本では通常一年間を通して選択授業を変えずに受けるのに対し、スヴィが通っている学校ではアプリを用いて一週間ごとに授業を変えることができました。そのため定期試験は科目ごとにあり、試験結果や授業参加度によって単位を取れるか決まります。授業を選択する自由もあれば責任も大きく、まじめに授業に参加しなければ卒業することもできないかもしれないのです。

 街を歩いてよくわかったのは芸術やホビーなど、仕事以外の活動への意識の高さです。学校に行くまでの道路や学校内を歩いていてもついつい立ち止まってストリートアートの写真を何枚か撮ってしまいました。しかも学校内にあったストリートアートは僕が滞在していた短い間で変化を続けて進化していました。このように新鮮なアートを見ることができたのはそれらを不正として撤去することがなく、半ば認めているからだと思いました。また、よりこの意識が見られたのはヘルシンキの新しい図書館「Oodi」でした。この図書館では、もちろん一般的な図書館のように本がたくさん置いてありましたが、それ以外に公民館のようにも機能していました。3Dプリンターまで並べてある製図室や会議室、料理室、音楽スタジオ、ゲームルームまでありました。これらはすべて図書カードを持っていれば無料で使えるらしいです。この図書館で孫とスーパーファミコンでゲームをしているおばあさんと出会いました。彼女は「若者がクリエイトできて、ほかのクリエイターと交流できる場」としてこの図書館を誇りに思っていると話していました。

 この留学プログラムを通してフィンランドの文化や歴史の一部を学んだり、またホストファミリーと話したりするのがとても楽しかったです。中でもフィンランドのサウナに入ってから湖にダイブしたことがとても思い出に残っています。ダイブする前は「寒いだろうな」と怖がっていたものの、勇気を出して入ってみると想像していたよりはるかに過ごしやすく、とても快適でした。皆さんも勇気を出して参加してみてはいかがでしょうか?

(3年 松藤 舜)

「Finland短期国際留学」

 およそ9時間のフライトを経てフィンランドのヘルシンキ空港に到着した時、私の胸中は期待でいっぱいだった。バスで交換留学先の学校へ向かったが、引率してくださった先生と会話したり、外の景色を見ていると2時間はあっという間だった。時間の都合上、途中に高校近くの教会に立ち寄る機会を得たが、ホストシスターをはじめとする現地の生徒達に早く会いたいという気持ちが強かった。

 学校に到着してからは、各自パートナーと共にステイ先の家へ向かう。彼女のお母さんに、ピックアップしていただいた。その後はパートナーと共に家の近くを散歩したり、好みの音楽をかけたりして過ごした。夕食にはフィンランドの伝統的な料理をいただき、想像を絶する美味しさに驚いた。日も長く、緑豊かでゆっくり時間の流れるフィンランドに留学初日から愛着がわいたことを覚えている。そんな素晴らしい初日からの8日間の経験をいくつか紹介させていただく。

 留学2日目、私達は英語の授業に現地の生徒と共に参加した。はじめに簡単な自己紹介をし、後にいくつかのグループに分かれて互いの趣味や学校・文化について盛り上がった。学校については慶應志木高校の進学システムや大学の一貫教育校であることなどを話したが、彼らが特に興味を持っていたのは男子校の実態と部活動についてだった。どちらもフィンランドでは滅多に無いものらしい。また、彼らは自分で受講する科目を選択するらしく、早いうちから将来のビジョンを形成することの必要性について話してくれた。彼らは当然のごとく話していたが、非常に見習うべきシステムだと感じた。同時に、彼らの能動的な生活にも尊敬の念を覚えた。現地でできた友人のひとりが「毎日放課後に学校で運動できることが羨ましい」と部活動について話していた。彼らは、エクササイズの時間を各人でとっており、ジムやプールにも頻繁に通うという。現に、私自身滞在中に二回ほど足を運んだ。施設には、日本のように筋トレ好きの男性ばかりではなく、子どもから女性まで、まさに老若男女多様な世代が訪れていた。私は、確かに部活動の存在のありがたみを再認識することができた。しかし、それ以上にフィンランドの人々が自ら運動時間の確保を徹底していることに驚いた。自由な時間に恵まれた高校生だからこそ、彼らのこうした自己管理力は、自身も実行に移すべきだと感じた。

 週末には、自分とパートナー、彼女の友人のフィンランドの生徒2人の計4人で隣国エストニアを訪れた。午前3時に起床し、帰ってきたのは日付がまわった午前1時というハードスケジュールだったが、それを感じさせない最高の1日だった。往復のシップではフィンランドのトランプゲームをし、現地では土産を買うことやお洒落な写真を撮ることに皆で興じた。特に覚えているのは、ある友人が「寿司を食べたい」ということで2時間ほど寿司屋を探したあげく、インド料理のビュッフェで昼食を済ませた出来事である。パートナー以外のふたりとはいずれも初対面であったが、かねてからの友人のように仲を深められた。彼らはいずれ日本を訪れたいと話しており、その時は旅のお伴をする約束をした。彼らとの交友関係は留学を終えた今も続いている。

 僕が現地での8日間で経験したこと、出会った人々について文章で全て紹介するのは難しい。この留学では、英語を深めること、異文化交流をすることという留学本来の目的より、はるかに多くのことを学ぶことができた。これからは、この経験をアウトプットすること、パートナー達の日本留学を最大限サポートすることに努めたい。最後に、僕を「家族」として受け入れてくれたホストファミリー、この留学を進めていただいた両校の先生方をはじめとする全ての方に心の底からお礼を申し上げたい。

(1年 佐藤 大己)