このたび、本校3年生の福山ろか君(筆名、本名航生)の短歌連作「さえずりに気づく」が、第68回角川短歌賞で次席に選ばれました。応募総数は768篇、予備選考を通過した33編から、松平盟子・坂井修一・俵万智・藪内亮輔各氏が推薦・選考しました。連作50首の中から、福山君自選の6首を紹介します。

 ガラス製の机に花瓶のせるとき感情だけがこわれてしまう

 葉桜を撮ろうと数歩下がりつつかかとに苔の質感を踏む

 ケチャップが自立できなくなるようなタイミングがやがてくるだろう

 イヤホンは真っ白に垂れ青年の鎖骨からしばらくをなぞった

 感傷的な僕だと思うかしゃかしゃと洗濯ばさみが回りだす午後

 さえずりが止まってさえずりに気づく 思い出を乗り越えていかなきゃ

 『短歌』2022年11月号の選考座談会では特に、藪内氏から「候補の中では僕が最も感動した作品」であり、俵氏から「言葉に対する独特の感覚は素晴らし」く、「その手前の何を詠うかの視線が、私達よりずっと下の世代らしいものを見せてくれてい」ると評価されています。同号にて「さえずりに気づく」全首を読むことができます。

 福山君は、2年次に第15回全日本学生・ジュニア短歌大会で毎日新聞社賞を受賞し、続く春休みには、第10回記念~家族を歌う~河野裕子短歌賞で俵万智氏による選者賞に輝いています。

 今回、高校生活を送りながら瑞々しい50首の連作を編み、歌人の登竜門とされる伝統ある賞で複数の選考委員から推され次席に選ばれたことは、1年次の国語の授業から始まった福山君の作歌遍歴の、貴重で大切な通過点となるはずです。

 福山ろか君からのことばです。

 角川短歌賞という歴史のある新人賞において次席に選んでいただいて、率直にとても嬉しいです。50首が誌面に掲載され、選考委員の方々から真剣な批評を頂けたことは大変光栄です。
 今回の結果を自信としながら、これからも短歌を楽しんでいきたいと思っています。最後に、短歌を通して私と関わってくださっている方々に、心から感謝したいと思います。