本校卒業生である作家・金子玲介君の第1作『死んだ山田と教室』(講談社、2024年5月)が出版社から寄贈され、4月25日(金)のHRにて、全校生徒に配布されました。

 本作は刊行前後から各メディアやSNSで大きな話題となり、『本の雑誌』が選ぶ2024年度上半期ベスト1や王様のブランチBOOK大賞2024、名物書店員による第11回山中賞などを射止め、第22回本屋大賞候補10作品にもノミネートされました。第2作、第3作も矢継ぎ早に刊行され、短編アンソロジーへの参加やエッセイの執筆、インタビューやメディア出演など、この1年、金子君は新人作家として異例の活躍振りです。そうした多忙な身でありながら、昨年10月の第77回収穫祭では本校を訪れ、在校生たちとの公開座談会企画に登壇し、多くの来場者の前で本作と本校の魅力を語ってくれました。

 金子君については、本塾広報誌『塾』最新号(325号、2025年4月)の「塾員山脈」でも取り上げられたばかりです(リンクはこちら)。

 同記事の見出しに「志木高校時代に「文学」の面白さに目覚め母校をモデルにした小説で作家デビューを果たす」とあるように、第65回メフィスト賞受賞後に加筆され刊行された本作は、「啓栄大学附属穂木高等学校」を舞台に繰り広げられる一風変わった、一筋縄ではいかないエンターテインメント小説です。男子校の活気や独特な教室の設えなど、志木高生及び関係者であれば、すぐにピンとくる描写が随所にあります。

 『塾』の取材はこの1月に本校で行われましたが、金子君は校内をめぐりながら、同行した担当編集者に在籍時の思い出について熱く語っていました。金子君は高校2年生から小説を書き始め、就職後も各新人賞への投稿を粘り強く続けて、長年の夢を叶えました。ぜひ本作を後輩に届けたい、本校で培った創作の絶対的な面白さを伝えたいという金子君のあふれる気持ちを出版社側がしっかり汲んだことで、各生徒に寄贈という運びとなりました。

 ところで本記事のHR中の写真は、『死んだ山田と教室』の主要舞台である2年E組の教室で撮影されています。2010年度の1年間、実際に金子君がクラスメイト達と机を並べて学び談笑した場所であり、黒板右上のスピーカーも当時のままです。本作には「山田ほむら」をはじめ、まさに写真そのままの志木高生の分身のようなキャラクター達が登場します。今後も本作(及びモデルとしての本校)の多面的で両義的な魅力、あるいは隠された問題意識が生徒間で認識・共有され、さらにローカルな枠組みを超えた普遍的なメッセージが、新たな読者に末永く発信されていくことと思われます。