阿部雄志君(2013年3月卒/医学部2年)

abe01.jpg阿部君は、幼稚舎から慶應義塾に入り、内部進学で、中等部、志木高へと進学してこられました。中等部からの内部進学者は、慶應義塾高校へ進む生徒が本校に来る生徒よりはるかに多い中で、なぜ阿部君は志木高を選んだのですか。

先生と生徒の距離が近いことが一番の理由です。幼稚舎から中等部へ進むときも同じコンセプトで学校を選んでいて、その点は昔からブレていません。自分が好きなことに打ち込める環境はどういう場所だろうと考えた時、適正な学校規模という要素はとても重要だったんです。また、中等部と志木高の共通点は、他の一貫教育校に比べて自由度が高いところだと感じていて、その自由の中から好きなことに打ち込める時間が生まれてくる、これも進学先を決める上で僕が重視した点です。それから、これは大学に進学してみてわかったことですが、他の一貫教育校からの内部進学者や、一般受験で大学に入ってくる人など、多くの新しい友人ができていく中でも、志木高出身者は人数が少ないのでまとまりがあり、その繋がりの強さも貴重な財産だと思います。

高校時代、とくに印象に残っている授業は何ですか。

僕は、人からは理系の人間だと思われているようですが、実は文系も好きなんです。これは志木高のどの先生にも言えることですが、やはりご自身の専門分野について教えられている時の授業は、とにかく面白くて印象深いですね。例えば、高校2年の時、原先生(仏像研究がご専門)の「日本史」の授業で奈良の東大寺が取り上げられたことがありました。そのお話を聞いたら、どうしても東大寺に行きたくなってしまって、青春18切符を買い、夏休みの部活動の合間を縫って、一泊二日の強行軍で奈良に行ってきました。それだけ突き動かされる何かがあったんです。

また、石島先生の「化学」(3年自由選択科目)では、毎週実験をするのですが、普通はある理論を打ち立て、その理論の正しさを裏づけるために実験をして検証します。ところが石島先生の授業では、実験の結果が思いどおりに行かないことのほうが当然で、そこが出発点なんです。そこから、「どうしてうまく行かなかったか」を考えて、もう一度やり直す、そういうトライ&エラーを繰り返すメソッドを教えてくれたのが、石島先生の授業でした。教科書に書かれていることをただ覚えるのではない、それこそが本当の「学問」ですよね。志木高の授業は、教科を教えるのではなく、学問としての取り組み方を教える授業だと思います。

abe02.jpgクラブ活動では、弓術部に所属していましたが、このクラブを選んだきっかけは?弓道の面白さや魅力は、どんなことですか?

中学時代から弓をやっていたので、高校進学後も迷いなく弓術部に入部しました。弓道は、的に矢を中てるだけの非常にシンプルな競技ですが、その難しさは、人間が毎回同じことを同じようにやれないところにあります。そういう意味では、自分と戦う競技で、そこが最大の魅力です。

3年時には主将として部をまとめる大変さも経験しました。後輩、同期、OB、コーチなど、それぞれの立場の人の意見を全て聞いて、自分の中で考え、答えを出す。苦労もありましたが、卒業後に後輩と会ったとき、「阿部さんが主将だったころが、一番部活が楽しかった」と言われた時は、すごく嬉しかったですね。だって、普通は自分が3年生になって上級生の顔色を気にせず、好きなことを言ったりしたりできる時が一番楽しいって思うじゃないですか。それなのに、あんなことを言ってくれて・・・僕の運営は間違ってなかったのかな、と思えました。

阿部君は3年間精勤(遅刻1回、欠席0日)で、成績も極めて優秀、部活でも主将として部を引っ張っていました。このように、バランスよく各方面で自分の実力を発揮するために、日頃気をつけていることは何ですか。

何をやるにしても、100%の力を出し切ってしまうと、そのあと元に戻すのが大変なので、ある程度、余力を残しておくことが大事だと考えています。そのためには、余力を残せるように計画を立てなければなりません。例えば、試験対策についても、僕は長期的な計画を立てるのが得意なので、あらかじめ計画を立て、毎日少しずつ積みあげておいて、試験前日に徹夜をしないで済むように調整していました。そうすることで、毎日の生活に余裕が出ます。

あと、個人的には、時間を区切るのがコツだと思っていて、例えば、今でも僕は午前0時以降は絶対に勉強しないようにしているんです。起きていようと思えば起きていられるし、深夜に勉強もできますけど、それをやってしまうと睡眠時間が削られて翌日以降に差し支えるのが眼に見えているので、そこは絶対に越えないようにしています。タイムリミットを決めてしまうと、どうしてもその前の時間で集中して何かをやらなければいけなくなるので、結果として見たとき、だらだらと時間をかけて作ったものより、短時間で集中して作ったものの方がクオリティが高いということはありますね。

ですから、日頃から気をつけていることとしては、「自分の力を上手く発揮できる環境を自分で整えられるかどうか」だと思います。

abe04.jpg志木高を卒業して1年以上が経ち、少し距離をおいて眺めたときに、「志木高」とはどんな学校だったと思いますか。

学業面に関して言うと、「この学校が僕に学問の楽しさを教えてくれた!」という思いが、一番大きいですね。大学に入ってみて、教授陣との距離が高校と大学でかなり違うことを感じているんですが、その一方で、やっていることはすごく似ていて、課題に対する学問的なアプローチという、志木高時代に身につけたことを大学でも引き続きやっていると言えます。つまり、大学での学問は、どこにも答えがないことについて頑張って頭を使って考え、答えを出していかなくちゃいけないわけですが、その作業は、高2の時に取り組んだ井澤先生のタンポポの研究課題ととてもよく似ているのです。「大学での学び」と「志木高での学び」は、たくさんの共通点があると思います。

また、校風という面では、「自由」とそれに伴う「責任」という点が志木高の特徴として挙げられると思います。科目の選択にしても、部活の選択にしても、幅広い選択肢の中から自分の進みたい道を選べるというのがこの学校の非常に良いところですが、同時に、自分で選んだ道には必ず責任が伴うというということも、志木高は教えてくれました。

abe03.jpg現在本校の受験や内部進学を考えている中学生へ、アドバイス・メッセージをお願いします。

入学後、学部受験か内部進学かの隔てなく、すぐにみんなと仲良くなれるところが志木高のいいところです。また、大学の友人と話していてわかったことですが、先ほど僕が言った「学問的な学び」や「自由に伴う責任」を吸収できる高校って、実はそれほど多くないらしいんです。ですから、せっかく高校へ行くなら、そういう貴重な体験ができる学校を僕はぜひ選んでほしいと思います。

所属学部・学年は2014年9月現在

 

 

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