原 浩史
仏像から人間を知る
私は日本史の教科書には必ず登場する、仏像の歴史について研究しています。そう言うと、仏像のことが大好きなのだろう、と思われるかも知れません。そうではないのです。むしろ、仏像のことがよく分からない。分からないからこそ、知りたい。それが、研究を始めるきっかけでした。
1400年以上前から今日に至るまで、この列島では無数の仏像が作られてきました。その多くは歴史の中で失われてしまいましたが、今も多くの仏像が各地に残されています。それらはなぜ作られたのでしょう? 古代に生きた人々は、木や銅で作られた仏像が助けてくれると思ったのでしょうか? そうではない、ということは、授業でお話ししますが、私が本当に知りたいのは、仏像のことではないのです。仏像を作り、そこに祈りを込めた人々、彼らが生きた社会のことが知りたい。仏像は、人間の心のありようと、それを反映した社会の変化について考えるための大事な手がかりです。仏像の面白さは、人間の面白さなのです。
原 浩史 (はら ひろふみ)
担当教科:社会 マンドリンクラブ部長
(2012年11月)