宮﨑 倫彰

志木高生よ 真の国際人たれ!

miyazaki01.jpg 2012年度に始まった、豪州クイーンズランド州にあるトゥーンバ・グラマー・スクール(TGS)との短期交換留学プログラムを皮切りに、近年志木高は国際化に向かっている。本年度(2014年度)には台湾台北市にある薇閣高級中學(Wego)との短期交換留学プログラムも始まり、独自のプログラムを2つもつまでに至った。
また、米国への慶應義塾一貫教育校派遣留学制度も2014年に創設され、元々、本塾一貫校の行っているプナホウ・スクールのプログラムを合わせれば、志木高生の国際交流の選択肢は以前よりずっと充実してきた。


国際交流に臨むにあたって、多くの人は2つの壁に直面する。それは、『言葉の壁』と『文化の壁』である。

『言葉の壁』については、語学が堪能でないと乗り越えられないと思っている諸君も多いと思うが、実際には、英語の成績が良く色々な単語や熟語を知っていようとも、文法的に正しい英語になっているかということにばかり気を取られたり、上手く話せるか不安で言いたいことを躊躇していては、意思疎通できない。逆に、大して語学が堪能でなくとも、伝えようという気持ちがあれば伝わるものである。

miyazaki02.jpg『文化の壁』については、まさに『郷に入らば郷に従え』ということが大事である。これは、何でも相手の言いなりになるというよりは、その土地の文化は歴史や風土に由来するところも多く、習慣などを教わることから、より深くその文化を理解できるという意味で大事なのである。また、相手の文化を知ろうとするとき、人は自分のバックグラウンドにあるものを客観的に再確認することができる。一方、相手を迎え入れるにあたっては、自国の文化や歴史をしっかり知っておくことが必要である。

この2つの壁を乗り越えた時、人は曖昧に生きていた自身を顧みて、はっきりとした意思を発信できるようになる。

私は今夏、2か国の短期交換留学の参加生徒を引率し、また、留学生を受け入れる立場であったため、2つの壁を乗り越えた先に結ばれる絆を目の当たりにできた。 豪州TGS校の生徒は、皆、紳士的で、男子校同士の交流であるが、参加した志木高生は全員感動したと話していた。お互いの将来のことを話したり、家族を大事にすることを自然にしている彼らを見て、多くの志木高生が自身を見つめなおしていた。ハグや強い握手をして再開を誓う彼らの姿は、実に清々しかった。

miyazaki03.jpg共学校である台湾Wego校の生徒は、屈託なく、常にウェルカムの精神で接してくれ、男女の別なく深い友情が結ばれていた。隣国であり、その気になればいつでも行き来できる距離にもかかわらず、帰国の際には全員が涙を流し、別れを惜しんでくれた。

両プログラムに参加した生徒は外国人の友達ができた、第2の家族ホストファミリーができたという以外に、確実に何かを得たように感じる。これは、単に彼らが短期交換留学プログラムに参加した結果ではなく、ポジティブな気持ちでその経験を受け止め、各自が昇華した結果に他ならない。私自身も、彼らと同じ時間を過ごすことで、少なからず得られたものがあると思っている。

miyazaki04.jpg国際交流に臨むとき、人は心を開こうとする。バックグラウンドの違うもの同士の交流であると頭で理解しているので、意識的にオープンマインドであろうと心がけるからだ。しかし、これは日本国内で他人と関わりあうにあたっても、本来は同じでなければならない。『国籍が同じで、同じ言語を話すから、わかって当たり前』と思ってしまいがちなのだが、この甘えが寧ろやっかいなのである。個人における真の国際化とは、単に国外に出て活動するということではなく、国の内外を問わず、相手のことを理解しよう、自分のことを伝えようと努力し、難しくとも、それを乗り越えて絆を結ぶことなのではないかと思う。

これからの社会を担う志木高生には、是非、真の国際人になってもらいたい。

宮﨑 倫彰 (みやざき のりあき)
担当教科:数学  電子工学研究会部長、弓術部副部長

(2014年10月)