「志木の森ツアー」は年2回、夏と春に行われる学校行事です。全校行事ではなく、希望者参加型ではありますが、一度参加してその魅力に取り付かれると何度も繰り返し参加する生徒もいるほど、人気のある行事です。1年~3年まで学年を越えて、まさに「同じ釜の飯」を食べて過ごすこと、また、2013年度からは本校以外の慶應義塾一貫教育校の生徒も参加できるようになったことなど、普段の学校生活以上の交流の広がりを体験できます。それでは、2013年度の志木の森ツアーを振り返ってみましょう。
夏の「志木の森」
2013年度夏の志木の森ツアーは、8月20日から23日(3泊4日)の日程で行われました。8月20日(火)、今回は初めての試みとして、名古屋からバスで伊勢神宮に向かいました。参加者は総勢35人、生徒は、志木高生24人、初参加の中等部生5人、教員は、本校の高橋校長、中等部の足立教諭、前北教諭、今後の生徒参加を計画している湘南藤沢中・高等部の田邊教諭、引率教員として本校の小澤教諭と中地教諭が参加、そして実行委員長は我らが志木高3年の夏目健太郎君です。久しぶりの大所帯になりました。
伊勢神宮には12時半に到着、全員で名物伊勢うどん定食を昼食に食べた後、参拝客で大いに賑わう内宮を参拝。五十鈴川は猛暑で涸れています。遷宮の年に重なり、人出の多さに驚きながら、おはらい町やおかげ横町で観光を楽しみ(赤福のかき氷は絶品!)、外宮に向かいました。参拝後、遷宮館も見学し、志木の森ツアーの定宿、噺野には17時に到着しました。夕食後に開かれた「森のセミナー開講式」は、高橋校長の「開講のことば」から始まり、吉田本家山林部ご当主であり塾員でもある吉田正木さんの講義へと続きました。
8月21日(水)は、朝食後に早速「深山」に向かい、三重県の林業研究員の方の指導も仰ぎながら、森林について深く学びました。その後「里山」に移動です。最近の里山プロット調査では、鹿による樹木の損傷を、鹿除けの囲いの内と外とで比較することに重点が置かれています。鹿の害の深刻さをまざまざと知ることになりました。午後は、レクリエーションです。サイクリング班とカヌー班に分かれての出発です。カヌーで向かった上流の岩場は、格好の飛び込みポイントで、岩場から水中に飛び込むたびに、中高生男子の歓声が上がりました。夜は木工細工に挑戦し、今回は「ストラップ」を作りました。
8月22日(木)は、熊野古道のハイキングです。今回は中学生にも堪能できるコースとして、始神峠(はじがみとうげ)を選びました。その後、速水林業のご厚意で大田賀山林の見学コースで林業の実地学習を行い、昼食後、三重県立熊野古道センターを見学しました。そして、夜は、お待ちかねのバーベキューです。今回は現地で獲れた猪と鹿に舌鼓を打ち、このときばかりは肉食系男子となって、すべての野生の滋味を味わい尽くしました。人工的な電飾が一切ない土地柄ゆえ、夜が更けると、暗闇にキャンプファイアーと花火の炎が美しく目に焼き付きました。
8月23日(金)、早くも最終日です。「Learning about Forestsプログラム」では、森の中での瞑想体験や、植生の違いを考えるクイズを楽しみました。そして、昼食後、志木の森の近く、伊勢神宮よりも古いと言われている瀧原宮を厳かに参拝して、最後の「森のセミナー」を行いました。人と森林とが、これからも互恵的な関係でいられるように、今私たちが心がけなければならないのはどんなことなのかを、参加者の一人一人が深く考える「志木の森ツアー」になりました。三瀬谷駅から特急南紀に乗り込み、18時過ぎに東京に無事到着しました。
春の「志木の森」
春の志木の森ツアーは2014年3月24日から27日の3泊4日で開催されました。今回の参加生徒は志木高生のみ21人、引率教員は本校の井澤教諭と中地教諭、2日目からは横浜初等部の星野教諭も加わり、総勢24人でした。実行委員長は今回も3年の夏目健太郎君で、志木高生として参加する最後の「志木の森ツアー」となりました。
3月24日(月)、夏と同じコースをたどり、名古屋から伊勢、伊勢から噺野へ向かいました。伊勢神宮では、内宮、外宮とも、遷宮の成った白木の美しいお社を参拝しました。人出の多さは相変わらずですが、観光スポットとして人気があるだけではなく、伊勢という土地からは、日本人にとっての歴史や信仰の意味を教えられます。「開講式」の森のセミナーでは吉田正木さん(吉田本家山林部ご当主・塾員)による講義と、生物の井澤教諭による森林生態学の講義が相次ぎ、参加者はいずれも食い入るように聞き入っていました。
3月25日(火)は熊野古道のハイキングです。絶好の日和で、今回は馬越峠(まごせとうげ)に向かいます。夏の始神峠(はじがみとうげ)より急峻で、最後の山頂アタックは殊にきついのですが、尾鷲湾(おわせわん)を見下ろす眺めはまさに絶景です。お弁当も一際おいしい。
下山後は、疲れを取る間もなく、すぐに今回の目玉である飯盒炊爨の準備にとりかかります。メニューは定番のカレーライスではあるのですが、薪割りで汗を流し、その自分で割った薪で炊きあげるご飯の味は格別です。カレーの材料の下ごしらえも、すべて自分たちで行いました。その甲斐あって、味は抜群で、カレーの大鍋はたちまち空になりました。その後、木工細工に挑戦、今回はキーフックを作成しました。
3月26日(水)は深山での伐採作業です。いわゆる間伐です。吉田さんから丁寧な指導を受けて、ヘルメットなど作業用の諸道具一式を身につけ、急斜面の森に分け入り、選木し、木の倒れる方向とスペースを見定め、鋸刃の入る位置と角度とを定めて、さらには木にロープを懸けて、ひと息に切り、ロープを引いて倒します。各班が4、5本も伐採して引き上げると、トラックの荷台には、きれいに長さと太さの揃った間伐材が積まれました。働いた日の夕食はいよいよバーベキューです。今回の肉は、雄のやや年取った猪だそうで、切り方も工夫され、特製のたれに漬け込むなどして食べやすくしてあります。ご飯は昨日と同じく薪割りから自分たちで行い、飯盒で炊きあげました。志木の森ツアーならではの食材を、今回もとてもおいしくたいらげました。食後のキャンプファイアーでは、星野教諭の応援エールで大いに盛り上がり、3年生は志木高生としては最後となる「若き血」を熱唱しました。
3月27日(木)、早くも最終日、森のセミナー「Learning about Forestsプログラム」では、まず映画「WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~」(矢口史靖監督、2014年春公開)のロケ地に向かいました。映画で実際に伐採された檜の大木をこの眼で見て、その後、噺野周辺の森を散策しながら、森の実地学習の総仕上げを行いました。森のセミナーでは吉田さんを講師に林業学を学び、瀧原宮を参拝してから「閉講式」を行いました。3年生の皆さんは今度はOBとして、このツアーに参加してくれることを期待しています。