201508_forest001_0826008_大田賀山林の見学.JPG.jpg

8月24日(月)から27日(木)にかけて、夏の志木の森ツアーが開催されました。今回は本校から志木の森運営委員長の石岡拓途君(2年)を中心に13名の生徒諸君が参加したほか、2013年夏のツアー以来2度目となる、慶應義塾中等部の地理研究会所属の3年生14名の諸君も参加してくれ(24日昼から26日朝まで)、教職員を含めると、総勢35名でのツアーとなりました。

志木の森(「慶應志木の森」)とは、1994(平成6)年に卒業生である吉田善三郎さん(塾員)より寄贈された、三重県度会郡大紀町・多気郡大台町に広がる山林のこと。スギやヒノキを中心とした「深山(みやま)」(大台町)と、より自然林に近い「里山(さとやま)」(大紀町)の2ヶ所から構成されています。1996年から行われている同ツアーは、現在では寄贈者のご子息で林業家の吉田正木さん(吉田本家山林部ご当主・塾員)に全面的にご協力頂いて、春・夏の年2回実施されています(詳細は「志木高豆百科」をご参照下さい)。

201508_forest002_0824_松阪木質バイオマス発電所見学02.JPG

今回のツアー初日の24日は、松阪で吉田正木さん・中等部の一行と合流後、まずは日本初の国産材コンビナートである「ウッドピア松阪」へ。田中穣さん(ウッドピア松阪協同組合事務局長)のご案内で広いコンビナート内の各工場を回り、山から切り出され、集められた木がさまざまな用途に加工されていく過程を見学しました。続いて向かったのは、日本で4番目、中部地方では初の、未利用間伐材を利用した発電所「三重エネウッド株式会社」(松阪木質バイオマス発電所)。現地では、発電所の準備段階から携わっておられる所長の小山内靖さん(塾員)の歓待を受け、発電のしくみについて分かりやすく解説頂きました。いずれも今回が初めての見学でしたが、志木の森でも育てている樹木が、その後どのように利用されるのか、より具体的なイメージを持てたと思います。恒例の瀧原宮〔皇大神宮(伊勢神宮内宮)の別宮の一つ〕参拝の後、夜には「森のセミナー」(その1)も行われ、吉田さんから慶應義塾と森林との関わりについてお話し頂きました。

2日目は、あいにくの雨天のため、志木の森での調査を取りやめ、午前中は深山と、吉田さんが所有されている山林の見学を行いました。植林から20年弱の深山の森から、50年、100年にも及ぶ森までを段階的に見学したことで、参加者の諸君は森林がどのように生育していくのか、その過程を実地で知ることができました。午後は、引率教員による「森のセミナー」(その2:伊勢神宮の建築・歴史に関する解説)、映画鑑賞に続いて、参加者総出でのカレー作り。志木高生・中等部生が協力して手際よく調理したため、予定よりも早く完成しました。自分たちで作ったカレーの味は格別だったようで、おかわりをする生徒が続出。楽しいひとときとなりました。

201508_forest003_0826007_川畑理子さんによる木材利用の講演.JPG.jpg

続く3日目は、中等部の一行と別れた後、いよいよ志木の森での作業。吉田本家山林部の皆さんのご指導のもと、今回は「里山」で、2013年3月に設置した鹿除けの保護柵の内と外での樹高測定・樹種の調査を行いました。柵の内外での樹木の生育状態の違いに驚きつつ、春の調査では判別が難しい樹種について、葉の形態的な特徴を調べながら、1本1本丁寧に調べる姿がみられました。午後は地元の「速水林業(大田賀山林)」の見学。それに先立って、国産材の活用方法の提唱や「FSC森林認証製品」の普及に取り組まれている川畑理子さん(株式会社グリーンマム代表・塾員)にご講演頂きました。品質上は問題ないものの虫喰いのような痕があることでこれまで活用されていなかった木材(「虫喰い材」)を、逆に痕をデザインのように見せることで上手に利用した事例など、興味深く聞き入っていました。夜は地元産の鹿肉のバーベキューとキャンプファイヤー。薪割りや飯盒炊爨(はんごうすいさん)にも挑戦しました。

最終日は、まず斎宮歴史博物館(多気郡明和町)に向かい、斎宮・斎王研究の第一人者である榎村寛之さん(同館学芸普及課長)の解説により館内を見学し、その後、皇大神宮〔内宮〕に移動しての自由行動。おかげ横丁で名物の伊勢うどんや手こね寿司、夏季限定の赤福氷に舌鼓を打つなど、思い思いの時間を過ごしました。

以上、充実した3泊4日。熊野古道ハイキングやカヌー体験などは雨天のため中止せざるを得ませんでしたが、森林の樹齢や用途に応じたさまざまな姿から伐採後の木材資源として活用される姿までを一通り目にしたことで(そのような機会はそうないのではないでしょうか)、おそらく参加者の諸君それぞれが、森林や自然との共生について自分なりに思いを巡らしたことでしょう。また、今回のツアーでは、前述のように多くの塾員の皆様にご協力頂きました。参加者諸君にとっては、多方面で活躍する先輩方の姿に触れ、慶應義塾社中の広がりを知る絶好の機会ともなったようです。

次回の志木の森ツアーは、春休み中(3月)を予定しています。多くがクラブ活動を引退し、時間に余裕のできた3年生をはじめとして、在校生諸君はぜひ一度参加してみてください。

なお、今回のツアーについては慶應義塾のウェブサイトでも取り上げられています。あわせてご参照下さい。


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