2019年9月24日から27日までの4日間、2年生が研修旅行に行って来ました。研修先は主に長野県諏訪周辺と新潟県糸魚川周辺で、ABE組の「諏訪入りコース」、CDF組の「糸魚川入りコース」に分かれ、互いに入れ替わる形で行動しました。ここでは簡単に「諏訪入りコース」を紹介します。

《初日》

 旅のはじまりは新宿駅でした。ダイヤの関係で例年より早い7時40分集合でしたが、遅刻も欠席もなく、無事「8時ちょうどのあずさ」5号にて出発。2時間ほど揺られて到着したのは山梨県の小淵沢駅。心配された台風17号の影響もまったくなく、むしろ夏空を思わせるほどの晴天ぶり。目の前に広がる清々しい高原風景に、日常とは違う「旅」を実感しました。

 バスに乗り換え長野県に入り、最初の見学地となったのは宇宙電波の観測所である「国立天文台野辺山」。標高の高い野辺山は水蒸気が少なく、人工の電波も少ないため、電波の観察には最適な場所としてここに観測所が設置されています。世界ではじめてブラックホールを発見したとされる、巨大な電波望遠鏡(アンテナの直径45m)は残念ながらメンテンス中で、アンテナが真上を向いた状態で固定されていましたが、これはこれでレアな一景が見られたと解釈ができるかもしれません。クラスごとの集合撮影ののち、2017年4月にオープンした展示室などを中心に見学、散策をしました。

 そこから一路諏訪に向かい、国内最古の神社の一つとされる「諏訪大社」に詣でました。諏訪大社は諏訪湖をはさんで南側に「上社」(本宮・前宮)、北側に「下社」(春宮・秋宮)があり、今回は「上社」の本宮を訪れました。全員で参拝したあとには、おみくじを求めた生徒たちによる長蛇の列。互いに引いたくじを見せ合い、笑いの広がる光景となりました。

 初日最後の見学地は「クリーンレイク諏訪」。ここは諏訪湖流域内の7市町村からの下水を集約し処理している、長野県営の施設です。毎年施設の方々にはご協力をいただき、今回も講義授業を受けたり、施設見学をさせてもらったり、充実した時間を過ごすことができました。宿泊は眺望の開けた諏訪湖畔のホテルでした。

 初日から、天文にはじまり日本史・地学・化学など、分野を横断した中身の濃い一日となりました。

《2日目》

 まずは諏訪湖を一望できる立石公園の展望台を訪れました。諏訪湖は、近年大ヒットした映画『君の名は。』に出てくる湖のモデルとなっており、この立石公園も映画に登場する風景の参考になった場所とされています。研修前の国語の授業で『君の名は。』を鑑賞していましたので、映画で観た場所にいま自分が立っているという「追体験」に多くの者が感動したようです。

 ここからは内容が一転し、「諏訪湖・木崎湖・青木湖」での水質調査を行ないました。普段、学校では主に机上での学習や実験がなされますが、この研修では現場で調査をし、その結果から考察を試みるという、いつもと違うフィールドワークが行なわれます。本旅行の主目的が「観光」ではなく、「研修」にある所以といえるでしょう。

 前日と同じホテルに戻ってからは一服する間もなく、すぐさま持ち帰った湖水の調査を開始しました。異なった湖水を比較することによって、それぞれの特徴が浮き彫りになっていきます。こうした実態を明らかにしていく過程に、真理を追究する「学問のおもしろさ」を感じ取ることができます。

《3日目》

 2泊した諏訪湖畔を離れ、バスにて糸魚川方面へと北上して行きました。2時間ほどかけて向かった先は中部山岳国立公園に属する「黒部ダム」でした。扇沢駅から黒部ダムまで54年間運行されていたトロリーバスは昨年で終了し、今年から電気バスとなりました。16分も続く長い傾斜のトンネルを抜けると、186mという日本一の高さを誇る黒部ダムが顔を出しました。この時期は10℃前後になることも珍しくありませんが、この日は快晴そのもので、半袖で十分の天候でした。短い自由時間のうちに、地学の課題の参考にと堰堤を越えて遠くまで足を運んだ者や、270mさらに高い展望台まで登り切った者など、それぞれ自主的に有意義な時間を過ごしていました。これも荘厳な風景のなせる業といったところでしょうか。

 電気バスで下山した後は、再び糸魚川に向けてバスで北上を続けました。日本海に面する糸魚川をいったん通過し、能生漁港に突起物のように存在する「弁天岩」を訪れました。この岩は約300万年前の海底火山からの火砕流堆積物でできているとのこと。地質学的な特徴を学ぶのに適した場所ですが、夕陽を浴びながらこの風光明媚な海岸を散策したのもいい思い出となったことでしょう。

 移動距離の長い一日となりましたが、前日のようなホテルでの実験などもなく、旅行最後の夜をのんびり過ごせたかと思います。

《4日目》

 最終日はクラスごとによるローテーションで3ヶ所を見学しました。

 一つ目の見学地は「フォッサマグナミュージアム」。2009年、糸魚川はユネスコが支援する「世界ジオパーク」に日本ではじめて認定されました。「ジオパーク」とは直訳すると「大地、地球を学ぶための公園」という意で、わかりやすくいうと、「その固有の大地を眺め、そこに生育する食材を味わい、大地そのものを学ぶ」というものです。この博物館では、学芸員の方のご協力により、例年と同じようにフォッサマグナに関する講義を受ける機会を得ました。また、ヒスイや石灰石などさまざまな展示物を通して、「世界ジオパーク」としての糸魚川の魅力を存分に知ることができました。

 二つ目の見学地は、ヒスイの産地として知られる「小滝川ヒスイ峡」。ヒスイ(漢字で「翡翠」と書きます)」は古代には装飾品として重宝され、いまも国指定の天然記念物ですが、ここでは巨大なヒスイ原石を数多く見ることができました。展望台から見上げた、3億年前のサンゴ礁からなる約440mの青海石灰石の大岩壁は圧巻で、その高さ、力強さに一同感じ入っていました。

 三つ目は糸魚川-静岡構造線の断層見学公園である「フォッサマグナパーク」。ここは日本列島の地質を東西に分ける巨大な断層を間近に確認できる格好の地です。約4億年前の西側の岩石と約1,600年前の東側の岩石が隣接している「断層露頭」や「枕状溶岩」など、理科教員の説明を受けながら見学しました。

 この3ヶ所をまわって、本研修の見学は終了となりました。一行は糸魚川駅から「はくたか566号」に乗り、2時間ほどで東京へと帰って来ました。往きの「あずさ5号」に比べ、静まり返った車内の様相は、3泊4日の心身の疲れを雄弁に語っているようでした。

《最後に》

 2日目の記事のところでも述べましたが、今回の研修旅行は、いわゆる世間一般の「修学旅行」的な要素はありません。基本的に理科を中心とした野外授業です。現地において五感をフルに活用して収穫してきた多くの成果を、後日時間をかけてレポートに仕上げ、提出します。そういった意味では旅行はまだ続いているといえるかもしれません。

 見学地でお世話になった方々にはこの場をお借りして謝意を示したいと思います。

 どうもありがとうございました。