フィールドワーク:静岡県東伊豆町稲取地区
フィールドワーク場所:静岡県東伊豆町稲取地区
(平成26年7月26日(火) 実施)
1. 調査概要
静岡県では昔から捕鯨活動が行われていたことが分かっている。"イルカ追い込み漁"と呼ばれる漁法も存在しており、それを実施していた地域の1つに東伊豆町が挙げられる。実際にその土地に赴き、そのようなことが行われていたという物的証拠及び「地域で行われる捕鯨」を考える上での参考資料の収集が目的である。
2. 調査報告
今回の調査における注目すべきものは鯆霊供養塔である。(写真1) 「鯆」とはイルカのことを指す。つまり、"イルカ供養塔"と言える。脇に書かれていた銘文によると、この供養塔は文政十年(1827年)に稲取の若者たちが世話人となり漁師たちに建てられたものとされている。なぜ、建てられたのか。これは、上述のようにかつて伊豆の漁港ではイルカ漁が行われており、知能が高く人に決して害のない生物であるイルカを食用として捕獲しなければならないという事実を当時の人々(漁民)が重く受け止め、その霊を慰めるために供養塔が建てられた。なお、この供養塔は伊豆では最古のものである。
イルカに関するものは他にもあった。写真2は「もやい石」と呼ばれるものである。使用用途は船が流されないように繋ぎ止めておくためのものであり、穴が開いている部分に綱を通す。伊豆ではイルカ追い込み漁が盛んであったことからその際に使用されたと考えられている。
最後に、「捕鯨砲」を紹介する。これは、明治から昭和20年代まで続いたゴンドウ鯨の捕獲に使用されたもので、最終的には単砲となり小型捕鯨砲として確立された。
『わがふるさと 東伊豆町』 静岡:東伊豆町教育委員会(発行) 昭和62年3月30日発行